2008年10月9日木曜日

黒いオルフェ 

光と闇を強烈に感じさせる映像。人々の感情はシンプルで力強い。
まるで神話の世界をリオに持ってきたかのよう。登場する人々はみなはっとするほど美しい。
主人公たちはともかく、穴の開いた服を着た子供たちも、雑貨屋のおばさんたちも、踊り狂う太った女たちも、みな表情が輝いている。

オルフェが「黒人の中でいちばん惨めな人間になってしまった」と嘆き悲しむ時、同僚が言う。「神に慈悲を乞うのだよ」と。現実の悲惨さに対峙するとき、彼らに残されたことは祈ること。そして生きている証しを全身で踊って表現することしかない。

彼らは貧しいなか、カーニバルのために生きているといってもいいほど衣装や準備に大枚をはたく。彼らの輝きは生きる喜びの発露のようだ。なんという力強さ。将来のために今を我慢してほそぼそと貯蓄しつつ、ささやかな幸せを追う私たちとの国民性の違いに圧倒される。圧倒的に貧しい国の人々が私たち日本人よりも力強い生命力を発揮できるのは、生き方の違いなのだろう。


オルフェとユリディスの悲恋ストーリーだが、この映画の本当のテーマは生命力の圧倒的な美だと感じた。

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