2009年1月23日金曜日

どうしたらよいのか?

母は家族の中で尊敬され、愛され、太陽のような存在だった。アルツハイマーの症状が進む前は。今、母は物がなくなることに戸惑い、家族を疑い、毎日少しづつ進む症状に脅えて暮らしている。物がなくなると「恐ろしい世の中になったわね」と静かにつぶやく。「どうしてこんなに色々なことが出来なくなってしまったのかしら、老いると言うことは、こういうことなのね。」とつぶやく。何より大切にしていた家族を疑い、自分の老いがあまりに急速に進むことをなすすべもなく見つめている。自分の脳が変調をきたしていることは、気づいているが、その理由は知らない。私たちも医者も、何も言わないから。

つれあいに、あなたなら、アルツハイマーと診断されたら黙っていて欲しい?教えて欲しい?と聞くと、それは教えて欲しいよ、と即答した。私もそう思う。残された時間を知り、出来ることをしておきたいと思うから。しかし、そんな私たちが、母には何も言えない。物がなくなるのは病気のせいで、家族がばかにしたり意地悪しているわけじゃないのよ、と教えてあげたい。今も、以前と同じように母のことを大切に思っているし、愛しているのよ、と言ってあげたい。しかし、進行の早い不治の病だと知ってしまったら、母は生きる意欲を無くしてしまわないだろうか?人から大切に思われ、その教養と人柄で一目置かれてきた人が、あまりの自分の置かれた残酷な運命に絶望してしまわないだろうか?

伝えることで母が私たち家族への信頼を取りもどし、残された日々をよりよく生きようという気持ちになってくれると判っているなら、ためらいなく告知するが、そんな保障はどこにもない。このまま家族への恨みと絶望をかかえたまま母の病気が進むのを見守るしかないのだろうか?

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