2009年1月31日土曜日

毎日かあさん 西原理恵子

 「毎日かあさん カニ母編」を読んでいたら子供を授かったその日の事が思い出されてきた。

 Aの時もIのときも一宮市民病院で産んだのだが、出産の後の風景はどちらも鮮明に覚えている。

 深夜に出産して、体はボロボロに疲労して雑巾みたいにふにゃふにゃなのに、心はキーンと雪山のてっぺんの空気のように静かで冴え渡っていた。ものすごい緊張と弛緩の狭間で精神が尋常でない場所に登っているんだ、とわかっていた。その心で病院の広い窓から夜明け前の青黒い空を見上げていた。まだ明るくなる前の、仄かに空気が変わってきたとしかわからないくらい大気の色が変化して、空を鳥が横切るのがみえる。雲が少しずつ形をなしてくる。刻々と変化する空の色を眺めながら、子供をこの世に産み落とすとは、どういうことだろう、と考え続けていた。それは確かに私も自然の1部であることを否応なく実感させる行いだった。医者や助産婦さんに助けてもらいはしたが、私は私の力で子供を産み落とした。うんこみたいに、自然に、あたりまえに。

 出産の後に訪れた精神状態をもう一度経験できるなら、私は何度でも子供を産みたいと思う。
自然の大きなうねりの中で、流れに全てを任せながら、たった一匹の命が、己の持つ自然の力で、もう一匹のさらにちっぽけな命を分化させ、己の未知なる力と大地のエネルギーを体で感じ尽くしたあの時間。

聖なるかな。

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